バリキャリ乙女のイド端会議室

主に婚活、時々しごと。華麗なるバリキャリの脳内会議の一部始終。

靴ずれと絆創膏と熱帯夜

こんばんは、年間300日スーツで過ごす女、バリキャリ乙女のイシイド マキです。


先日、靴ずれができまして思い出した夏の物語でございます。

 


靴ずれ


ワタクシがまだ婚活戦線の最前線でバズーカ担いで迷走していた頃のこと。
とある殿方様とお食事にいくことになりました。
駅で待ち合わせをして、駅から20分ほどのイタリアンレストラン。
歩くことが分かっていたので、ヒールも2~3cm程度の低いもの、履き慣れたサンダルを履いていました。
ところが。
梅雨が明けてもまだじっとりと湿度も高く、たった20分ほど歩いただけで汗をかいて滑りが悪くなったのか。
靴ずれができてしまいました。
しかも両足に。
歩いているときは気にならなかったのですが、席についてから違和感を感じて見てみるとつぶれて皮がめくれていました。
元々、お酒も入るし帰りはタクシーで帰るつもりでしたので気にもとめずに乾杯したワタクシ。
空腹に適度な運動と熱帯夜。
そうして酔いはすぐにまわり、正確な判断を奪っていったのでした。


食事の後半で彼が言いました。


「帰り、歩ける?」


帰りはタクシーで帰ろうね、とあらかじめ伝えていたのだけど、このレストラン、お酒の種類も豊富でボリュームも満天。
どうやら食べ過ぎたらしい。
彼は腹ごなしに歩きたくなったのだ。たぶん。
私も歩きたい気分にはなっていたので靴ずれのことを伝え、途中でコンビニに寄らせてもらうことにした。


お店を出て、200mも行かないところにコンビニはあった。
こんな時間なのにもう夏休みだからか、コンビニの前には5、6人の女子高生がたむろしていた。
制服にショートヘア。
よく陽に焼けて、ひとりだけジャージ姿の子がいて、運動部で試合の帰りか打ち上げか。
キャッキャッとはしゃぐ彼女たちをすり抜けて、LEDの室内灯がまぶしい店内に入った。
アメニティの並ぶコーナーにはなぜだかたくさんの絆創膏が並んでいる。
お茶のペットボトルと一番小さい絆創膏を手に取り、外国人のアルバイトにお金を払う。
店の外に出ると女子高生たちのすぐ脇にパイプでできた柵がありそこに腰を下ろした。
コンビニにはベンチなんて気の利いたものはないのでバックも地面に直置きだ。


絆創膏の小さな箱を開けるとなぜだかチューブが入っていた。


『塗る絆創膏』


よく見るとそう書かれていた。
水仕事をするときに、ささくれやあかぎれに塗ると膜になって水がしみない消毒薬らしい。
箱の小ささを重視したため、詳細を全く見ずにか買ってしまったのだ。
これではサンダルのストラップからの攻撃を防げる気がしない。
だけども万が一に万が一ということもあるかもしれないので、とりあえず塗ってみた。


「………っ」


………………ってぇ!!
セメダインのような臭いの薬剤はめちゃくちゃしみた。
堪えず吠えると隣の女子高生たちにこっちを見られた。


「どうする?やっぱりタクシー拾う?」


そして始終を見ていた彼の、この言葉が火をつけた。


「ううん、ちゃんとした絆創膏買ってくるね」


そう言って改めて絆創膏を買いに店に戻った。

 


絆創膏はいい仕事をした。
私に全く痛みを感じさせなかった。
途中で彼は「酔っ払った」とかなんとかアピールしていたが、知ったこっちゃねえ。
そのまま駅まで軽快に歩き続けた。

 


バリキャリを掻き立てたもの


さて。
彼の言葉のナニが私をイキリ立たせのでしょうか。
優しい彼は私の靴ずれを心配し、タクシーを拾うか?とちゃんと尋ねてくれています。


だけども。
私どもバリキャリは日々『やれるか、やれないか』の選択を迫られております。
そして困難であれどベストな選択が評価されるということを知っています。
時に『NO』と言うことも必要ですが、自分の楽のための『NO』は命取りになることがある、ということも知っています。
ですから基本的に困難な蕀の道チョイスがマストと骨の髄まで染み込んでいるバリキャリにとって、『タクシーを拾う?』という問いは『タクシーを拾うか拾わないか』の二択ではなく『靴ずれをおして駅まで歩く』の一択にしかなり得ないのです。


昨今、選択できることが良しとされる風潮があります。
選択権を渡すことで相手を尊重しているようにも見えますが、選択権を与えないという優しさもあるのです。
例えば、優柔不断な人に100の選択肢を与えたら決められません。
選びやすいと思えるところまで選択肢を減らしたらどうでしょう?
親が子供の進路を決めてしまうとか、人生をかけるような大選択でなければ、それは優しさなんじゃないでしょうか。


そして、よく女性に好みの男性のタイプをお聞きすると


『頼りになる人(はあと)』


とかなんとか言っちゃったりするじゃないですか。
あれって、力持ちの人でも頭のいい人でもなく、壁ドン顎クイの上ッ


「オマエは俺のことだけ見てればいいんだよッ!オマエを愛してる…ッ!」


みたいなのを求めてる訳でもないんですよね、きっと。
そういう俺様っぽく引っ張ってほしいんじゃなくて、さりげなく『私ファースト』をしてほしいってことなんだと思うんです。
ですから、この場合。


「タクシーを拾おうよ」


選択肢ではなく、Let'sで提案するのがベターだったんではないでしょうか。


わがままかな?
いや、女子ってそんなもん。


そんなことがあったなーなんて思いながら、靴ずれに絆創膏を貼る夜なのでした。