こんばんは、年間300日スーツで過ごす女、バリキャリイシイドです。
新年度が始まり、新入社員の皆さまも新しい環境に少しは慣れた頃でしょうか。
新しい環境で服装や身だしなみについて注意を受けたり…そんなこともあるかもしれません。
今日はそんな身だしなみについて。
コンプライアンスとネイルアートと
あれはイシイドがかろうじてアラサーといえた頃のこと。
当時はなかなか過酷な労働環境でありました。
いつ心がポッキリ折れてしまってもおかしくない、いえ、むしろもう折れちゃってるけどぷらんぷらんさせながら走っている、そんな状態でありました。
そんなわけで、どうにかこうにか走っていくために、馬の鼻面にニンジンは必要ということで、その頃はまっていたのがネイルです。
ネイルといってもそう派手なことはせず、淡いピンク色にラインストーンをひとつかふたつ。
10本の指のうち1本か2本というおとなし~い、地味なものでした。
それでもキーボードに向かったとき、自分の指先がまるで桜貝がキラキラと輝くように見えるのはモチベーションを上げるのにかなり助けになっていたのです。
ところがこの密かなお楽しみが事件を起こすのです。
慇懃無礼でごめんなさい
ある日のこと。
一人のお客様が飛び込んできました。
年の頃、50歳前後。
少し険のある顔つきで
「営業の⬜️⬜️って人います?」
後輩営業マンの名前。
普段フレンドリーでお客様からの人気も高い彼をこんな風にいうお客様は珍しい。
お顔も見覚えがないので、あまりお得意様という感じではなさそうです。
「あいにく、⬜️⬜️は外出しておりまして、
一瞬、舌打ちせんばかりの表情で見上げると
「誰でもいいんで、これ、教えてもらえます?」
一枚の書類を取り出しました。
契約書の一種で、ご本人と配偶者の署名捺印が必要な書類です。
よせばいいのに、そのままイシイドがお話を伺います。
「え?旦那のもいるの?聞いてないんだけど」
問い合わせしてから来てないよね、たぶん。
「恐れ入りますが、こちらにご主人様のお名前が印字されておりますので、ご主人様のご署名と捺印は
「私が書いちゃいけないの?」
「筆跡が同じだと本社の方でハネられてしまうことがありますので…
せっかくお預かりさせていただいても書き直しになってしまうと申し訳ありませんし、あと、印鑑も別のものを押していただければ間違いないです。」
「え?印鑑もこれしかないんだけど」
「では、一旦お持ち帰りいただいて、ご主人様のご署名と別の印鑑をご用意いただいて
「聞いてないんですけど!」
どうやら。
旦那さんにはどうしても頼みたくないご様子。
⬜️⬜️くんとも話はしていないようで、そりゃあ分かるわけがない。
正直に言えば、筆跡が同じでも印鑑がおなじでも書類は通る。
(後で監査が入るとヤバイけれど)
自分のお客さまだったら多少は片目をつむってしまうこともある。
だけど、こういうお客さまのこういう状態というのはすんげぇ危険。
何がどう歪められるかわかったものじゃない。
時代はコンプライアンス。
だから目の前での、堂々の代筆を見過ごすわけにはいかないのだ。
「あのぅ…こことここの欄の筆跡さえ違えば(たぶん)通るんです。
本当にご本人様かという確認までは取りませんので
「わかったわよ!!」
バタバタバタバタ…
書類をひっつかむとすごい勢いで帰っていかれた。
「なに、いまの?」
さすがの勢いに上司が顔を出した。
「えーと、かくかくしかじかでお客さまを怒らせてしまいました」
「あー。まぁ、⬜️⬜️に言っとけよ」
そして数日後、イシイドは話題の人となるのです。
全社展開
「イシイド、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう」
珍しく、人払いされたであろう事務所で上司に声をかけられました。
「これ、ちょっと見てくれ」
店長各位
◯月×日 00:00 お客さまより入電。
当社T店女性営業に対する苦情の件。
お客さまは担当営業より依頼された書類を届けるため来店。
対応した女性営業の対応が良くなく、不快な思いをされたという。
(中略)
特にネイルアートが派手でとても接客業とは思えず不愉快であった。
適切な服装身だしなみの指導を徹底するべきうんぬんかんぬん。
・・・・・・・・・・
なんじゃこりゃあっ!?
イニシャルトークがイニシャルトークになってないし。
私ってモロバレじゃん。
「昨日、客相(お客さま相談室)に電話があったそうだ。
どう思う?」
「どうって…確かにお客さまを怒らせましたけど、ここまで言われるのはちょっと…納得がいかないです」
「だよな。
お前さ、M子のことはどう思う?」
「?」
M子は他部署の受付をしている後輩だ。
彼女は後にとんでもない窮地に追い込んでくれたのだけど、またそれは別のお話。
目鼻立ちのハッキリした派手な顔立ちで、柳原可奈子のネタのような接客をする。
あ、もしかして濡れ衣だったってこと?
それならあり得…いやいや、間違いなくあのお客さまは私が接客した。
私の問題なのだ。
話が見えてこない。
「M子の爪だよ」
ようやく合点がいった。
M子の爪は、なんちゃらクローとか超人の必殺技にでもなりそうなくらい長くて派手だ。
この間はチャラチャラと鎖までついていた。
真っ赤、ならまだいい方でターコイズブルーとか泥みたいなグレーだったりすることもある。
以前、白地に黒い点々(ダルメシアン柄だった)の時はチンアナゴに見えてしまって『絶対一緒に寿司は食べたくない』と思ったものだ。
「ちょっと行き過ぎだとは思います。
人のことは言えませんけど」
「だろ?俺もちょっとナイと思う。
だけどよ、他の店舗でも受付の連中はみんなあんな感じなんだと。
上が注意してもそっぽ向かれるんだわな」
わかる気がする。昨今の女子は元気だ。
「で、今回の客相だ。
⬜️⬜️にも聞いたけど、誰がやっても問題になるお客さんだ。
お前の接客だけが悪かったわけじゃない。
それはみんな分かってる。
だけどネイルの件は、こういう苦情があったということで受付の連中にも強く言えるチャンスなんだな」
えーと、それは
「見せしめってことだ」
やっぱり。
「すまんな、社長も重役もお前がそんなヤツじゃないって分かってるんだけど、ここは悪く思わんでくれ」
と、頭を下げる上司。
普段、あれほどパワハラなくせに。
本来なら、腹を立てるところなのかもしれない。
でも、隙を見せた自分もいけないのだ。
『見せしめ』と言われても悔しくはなかった。
「あ、でもそれ(ネイル)はなんとかしとけよ」
「はーい (^_^;)」
事務所を出ると⬜️⬜️くんは平謝り、同期や過去に一緒に仕事をした先輩方からは
「お前、何やったー!?」
との電話が数件。
「あはは、かくかくしかじかで(以下略)」
と対応に追われたのでした。
その後、受付嬢たちの爪はどうなったかというと。
少しおとなしくなったものの、1年もしないうちに元通り…
怒られ損?
いえいえ、こんなにも信用されてて、心配されてるとわかっただけでもありがたいことです。
ただ、あれからネイルアートはしていません。
ファッションはコミュニケーション
さて、新入社員諸君に告ぐ。
学校の制服やリクルートスーツから解放されて喜んではいないだろうか?
社会人になると制服や作業着が決まっていても、これまでほど厳しく取り締まられることはありません。
でもそれは。
『なにをやっても許される自由』を手に入れた訳ではないのです。
ファッションは自己表現。
確かにその側面はあります。
だけど個性という名のひとりよがりになっていませんか?
私は、
ファッションはコミュニケーション。
だと思っています。
規制されない分、自分で『どういう姿が望まれるのか』を考え、律していく必要があるのです。
それは自分都合ではなく、相手ファーストの精神があればこそ。
余談かもしれませんが。
婚活でも、
「相手の服装がダサくて嫌になった」
ということがよくあります。
これは本当にダサいことが嫌なだけではなく。
その場にそぐわない格好をしてくる = 常識、協調性のなさに対して幻滅するということでもあります。
今日の身だしなみは誰のためのものですか?
婚活ファッションのお話はこちら
もういっちょ