こんばんは、年間300日スーツで過ごす女、乙女イシイドです。
先日名古屋某所を車にて通過中、ふと星乃珈琲店が目に入りました。
星乃珈琲店といえばふわふわ厚焼きの『スフレパンケーキ』が有名です。
年始に行った大阪城公園近くの『cafe & pancake gram』で、1日3回各回20食限定の『プレミアムパンケーキ』を運良く食してから、パンケーキ愛がむくむくと膨れ上がっておりました。
こちらがその時のお写真。
ふわふわすぎて、店員さんが倒さないよう必死の形相で運んでくれます 笑
写真に違和感があるのはシロップがかかっていないから。
実は反対側にシロップ壺があったのですが、かなり食べ進めるまでその存在に気がつかなかったのです。
それくらい高ーく積み重なってました。
星乃珈琲店のパンケーキはまだ食べたことがなかったので、ついついハンドルを切って駐車場に吸い込まれそうになったところ、ハタと気づいたのです。
「あ、ここ、あのときの星乃だ」
『あのとき』は電車で来ていたので一瞬分からなかったけど、一度来たことがあったお店です。
私はこのお店で天使とお見合いしたのです。
庶民派の天使
遡ること半年ちょっと。
当時の私はプチ失恋をしていて半ばやけっぱちでお見合いを組んでいました。
彼はその時のお相手で、布袋寅泰さんから『影』を取ったようなイメージの、細身長身で5歳以上も年上の方でした。
待ち合わせはその名古屋某所。
「こんにちは~」
とにこにこ嬉しそうにテンション高く現れました。
およ。
想定外の印象に若干戦きつつご挨拶をすませると
「早く着いてしまったのでこの辺りをぐるぐる回って、良さそうなお店を見つけておきました~。そちらでいいですか?」
「はい( ^▽^)」
それが、件の星乃珈琲店だったのです。
いや、いいのよ。
他には飲食店らしいところもないし。
だけどブログでチェーン店をバッサリ『ダメ、絶対』と蹴散らした点前ちょっと苦笑いしてしまった。
まぁ、この方が私のブログを目にすることはないでしょう。
彼の後に続いた。
天使の愛車
席に着いて30分。
彼はただ話し続けた。
緊張のあまりマシンガンをぶっ放し続けたわけではなく、ただだだ楽しそうにえへらえへらと話し続けた。
まるで口から甘いお菓子がこぼれるように。
きらきらコロリと話し続けた。
このヒト、だいじょーぶなんだろうか。
40も過ぎた大人の男性が終始こんな感じでちゃんと生きていけてるんだろうか?
失礼ながら彼の行く末を案じ始めた時には
男としての興味 < 生き物としての興味
に完全に刷り変わっていて、イシイドの中のお仕事モードがパワーオンとなった。
「そうですか、車がお好きなんですね?
今は何に乗られてるんですか?」
「見ます!?僕の愛車!!」
お。食いついた。
ごそごそとリュックから取り出したのはスマホでもタブレットでもなく茶封筒。
そこから取り出した1枚の写真を手渡された。
……………ア◯ト………?
そこに写っていたのは軽自動車のロングセラーだった。
たぶん二世代くらい前のモデルだ。
どう見ても10年選手といった風だ。
よーく目を凝らしてみたが取り立てて変わったところはない。
ターボ車ではあるみたい?
乏しい知識を総動員させてみたけど、この車に、何かプレミアがつくような話題はなかったと思う。
「今まで乗った車は全部写真撮ってあるんです~」
そう言ってあまり当たらない占い師がタロットカードを並べるように、スッスッとテーブルの上に数枚の写真を広げた。
う、う~ん…
これといって、特徴のある車は見当たりません。
あ、これ、小学校のときによく一緒に遊んだあやみちゃんちの車と一緒だ。
マークⅡ?
おそらく子供の頃、親が乗っていた車も含まれているのだろう。
もしもそこに分かりやすい高級車が写っていたら。
「やった、金持ちロックオン!」となるか「は?自慢?イケすかねぇな」と思うかはそのお嬢様によるのだろうけど、とりあえず
「すごいですね!」
と言えばいいことだけはわかる。
高級車でなくても明らかに特徴のある車、例えば日産ラシーンとかトヨタWILL Viとか。
軽自動車でもスズキのラパンとかダイハツコペンとか。
よくわかんないけどとりあえず
「かわいい!」
と思わず言えるようなビジュアルなものであったなら。
これほど困惑することはなかったのではないだろうか。
会話を持たせるためにネタを仕込んでおくのは大変素晴らしいことです。
でも、そのネタが褒めるどころか突っ込みどころのないものだったりすと、むしろお相手さまに恥をかかせちゃいけないと気を張ることになるのです。
時々会話も途切れることなく弾んでいい感じだったのに音信不通になった、なんてお話はよく聞きます。
それってこういうことじゃない?
会話は淀みなく続いたのかもしれないけれど、脊椎反射で返せるようなものではなかった。
失礼にならないように気をつかった返事を導き出さなければならなかったのだ。
こちとら、はじめからケンカをしに来ているわけではない。
思ったままを口にして、傷つけるのは本意でない。
それでも、終始突っ込みどころない話題を提供されたら言いたくなる。
「自分で回収せいや」
そんなわけで、接客のプロたるイシイドがどーにかこーにか絞りに絞ってひねり出したコメントが
「だ、大事にされてたんですね…」
「そーなんですぅ」
…脱力。
天使のインテリア
彼のデッキにはまだ切り札が残されていたようだ。
「実は、
もう一枚写真を取り出した。
「インテリアも好きなんですよ~」
そこには妙にオシャレな部屋の一角が写されていました。
あら、意外。
「すごくお気に入りでぇ」
「素敵ですねぇ」
「カーペットが気に入ってぇ、ニ◯リなんですよ~」
(○_○)!!
「今度のボーナスで買うつもりなんですぅ」
まだ自分のものでもなかった…!
私もニト◯さんの製品は使ってますよ。
お店に行っても楽しいし、会社の備品を買いに行った時にはすごく面倒なお願いをしたのに丁寧に対応してくれました。
古い自動車や量販店の家具が悪い訳ではないのです。
それらを好むということは『質素で堅実』とも言えるでしょう。
『結婚』ってそういうものだよ。
既婚の皆さまはおっしゃるかもしれない。
確かにその通り。
結婚は生活であり、いつまでも恋人同士のような甘い関係だけではいられなくなるはずです。
だけど将来、二人の間に摩擦軋轢が生じた時に。
長い長いお二人の歴史の地層の中に、恋していた頃のキラリと光る思い出があるからこそ、許し、関係を続けていけるのだと思います。
だから、ほんのちょっとでいいのです。
『恋する要素』がほしいのです。
手にした写真の、そっと裏を見てみると有名なフィルムメーカーのロゴが入っている。
デジカメではなく、写真屋さんで焼いてもらったであろう味のあるフィルムの写真。
もしかしたら婚活のお相手に見せるために、家中のアルバムからひっぺがしてきたのかもしれない。
封筒に入れていても持ち歩いていれば痛むもの。
写真の角が少しだけ折れていた。
最後の審判
イシイドは悩んでいた。
もしもこの写真がコンランだったり、せめてIKEAやMUJIだったら私はこの人を見直しただろうか。
結局、金か?
つまりやっぱり金なのか?
試されている気がした。
私は。
普段、相手の収入は関係ないとか言ってるけれど、いざとなったら金の臭いのしない男には見向きもしない、金に卑しい女なのかと。
この質素きわまりない、純粋培養されたようなこの人は、もしかしたら神から遣わされた天使で私を試しているのかもしれない。
もしもこの人の手を取ったら。
天界への扉が開くのかもしれない。
はたまた、観音様に身を変えて『般若心経』を教えてくれたりするのかもしれない。
なんなら、女神様が「正直者のお前にこの銀の斧と金の斧を授けましょう」とかいう展開になるのかもしれない。
だけれど。
欲まみれと罵られようと、天国に行けなかろうと。
日常生活にもワクワクするような気持ちを持っていたいと思うのだ。
「そろそろ1時間ですね(本当はまだ45分だけど)」
「えっ、もうですか。まだマキさんのお話を聞いていないのに」
「それはまたの機会に」
天国への扉は閉ざされた。
そんなことを思いだし、あわててハンドルを戻した。
またあの天使がいるような気がして一人でお店に入る勇気が持てなかったのだ。
今度のおやすみに、若さまを星乃珈琲店に誘ってみよう。
そして、「このお店で天使とあったことがあるのよ」と言ったらどんな顔をするだろう。
そんなワクワクするような日常を私は今、手にしている。
なぜチェーン店がだめなのかはこちら
2018.3.11追記
こちらのブログでご紹介いただきました。
特派員 ハペボンさま(id:centeroftheearth)
実は最初私の記事に誤解があったのですが、ご指摘するとめっちゃ速攻で修正してくださいました。
イシイドは常々思っていたのですが、地底人は地上人の倍速で生きているのではないか、と。
地底のエルベナノデ~帝国の地底人でいらっしゃるハペボン殿はブログの更新もめっちゃ早い。
独特の語り口も、カセットテープを早送りしたようなイメージで読むととってもしっくりくるので~あります。
みなさまも、地底のハイ・テン・ショーンな世界に旅立ってみませんか?