こんばんは、年間300日スーツで過ごす女、バリキャリ乙女のイシイド マキです。
引き続き、歌舞伎初心者のイシイドがざっくり歌舞伎の世界をご紹介。
月イチ歌舞伎がオススメ
大興奮の『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』御園座公演でございましたが、実はイシイド、『歌舞伎ワンピース』を観るのは2回目なのです。
1回目は映画でした。
月イチ歌舞伎とは
歌舞伎を映画で。
映画館で楽しむ歌舞伎『シネマ歌舞伎』
歌舞伎は舞台だけで楽しむものではありません。
『シネマ歌舞伎』はその名の通り歌舞伎の舞台を映画で上映しています。
演目は毎月変わり、古典から新作まで幅広く上演されます。
歌舞伎の舞台は広い。
慣れるまではどこを見たらいいの?と戸惑うこともあるはず。
でも、この『シネマ歌舞伎』ならバッチリ見どころにクローズアップしてくれてるし、解説もあるので歌舞伎ビギナーには本当にオススメ。
料金は大人2,100円と普通の映画に比べると少しお高いけれど、歌舞伎の舞台は1万円以上が当たり前。
そう思えばなんてお安い!
上映時間も普通の映画よりも長く、舞台同様、幕間(まくま)と呼ばれる休憩時間があります。
カットされるシーンもありますが、それは本物の舞台を観たときのお楽しみということで。
しかも、劇場内にはスタンプラリーが設置されていて、スタンプを集めて素敵な景品までもらえちゃう。
そりゃ、毎月通うよね!
ちなみに、6月の上映作品は
『東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(とうかいどうちゅうひざくりげ こびきちょうなぞときばなし)』
弥次さん喜多さんでお馴染み、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』を原作に、歌舞伎座で起こった殺人事件。
犯人と疑われた弥次喜多の二人は無事、事件を解決できるのでしょうか…?
脚本・演出は市川 猿之助。
6月9日から全国公開です。
東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖 | 作品一覧 | シネマ歌舞伎 | 松竹
全国の映画館で上映されていますから、あなたの町にも『月イチ歌舞伎』はやって来ているかも。
興味を持っていただけたなら、ぜひチェックしてみてください。
ちなみにイシイドは名古屋駅、ミッドランドスクエアシネマで観賞しています。
ミッドランドスクエアシネマでは、お酒の販売もしています。
ですから、ほろ酔いで『月イチ歌舞伎』を楽しんだ後のランチは、レストランフロアにある蕎麦の銘店『蕎麦工房 紗羅餐(さらざん)』さんで粋を気取るのが定番のコースなのです(もちろんここでも飲む)。
幸せのドボン席
さて、今回の『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』
御園座公演はちょっとバタバタしてたこともあって、本当は諦めていたんです。
ところがひょんなことで問い合わせてみたら一席だけ残ってた。
それがこの席。
えーと、ここ。
えっ、えっ、イシイド、超ラッキー!
と思った人。
ノンノン。
実はここ、ドボン席と呼ばれるのです。
舞台についてお勉強
ここで、舞台についてお勉強しましょう。
歌舞伎に関わらず、客席に座って舞台を見たとき。
右側を『上手(かみて)』左側を『下手(しもて)』といいます。
そして、歌舞伎には『花道』という客席を貫いて舞台につながる通路があります。
通常下手寄りに設置されていますが、演目によっては上手側にも作られることもあります。
(これは『仮花道』と呼ばれます)
花道はただ入退場するためではなく、サブステージとしての役割も持つ歌舞伎特有のもの。
例えば。
美しい花魁が花道をゆっくりと入場してくる花魁道中は、観客も主人公といっしょに恋に落ちていく感覚を味わいます。
舞台を江戸に、花道を江戸へ向かう街道と見立てて、旅人たちが「これから江戸で一旗上げて大儲けしよう」なんて企んだり。
はたまた探し求めた仇討ちの相手を花道に追い詰めて対峙するシーンであったりね。
この花道では結構重要なシーンも演じられたりするのです。
そして、この花道。
幅は1.5メートルと非常に細い舞台なのですが、なんと『迫り(セリ)』があります。
『迫り』とは舞台の一部がエレベーターのように上がったり下がったりするもの。
舞台上に人が突然現れたり、消えたりする演出に使われます。
花道の舞台寄り、七三の位置にあり『すっぽん』と呼ばれています。
特にこのすっぽんで入退場する役どころは、幽霊だったり幻だったり、この世の人ならざるものであることを示しています。
前回ご紹介した『宙乗り』もこのすっぽんの位置が始点になることが多いようです。
『宙乗り』は登場人物が神や怨霊、狐など大いなる力を手に入れた証として宙を舞います。
花道の七三は『人ならざるもの』を暗に示しているのですね。
『花道』の異界性について
ここからは私イシイドの全くの私見でございまして、うっかりよそで話すと恥をかくかもしれません。
ご注意を。
私は『花道』が歌舞伎独特のものであること、こういった使われ方をするということを知って、とても腹に落ちる思いをしました。
歌舞伎でなくても、たまに客席から出演者が登場するような演出はあります。
観客にはとても喜ばれる演出ではありますが、これとはちょっと違う。
舞台は左右方向に展開します。
花道は直角に、前後方向に展開します。
舞台を『虚構の世界』、客席を『現実の世界』ととらえると花道は『虚構』と『現実』の交差点となります。
そして、その七三(すっぽん)の付近はどちらの世界にも属する、または属しない『異世界』であり、『異界への入り口』としての役割を担うのは自然な発想ではないでしょうか。
平安時代頃から『百鬼夜行』という現象が信じられていました。
夜中にさまざまな形の鬼や妖怪たちが列をなして行進します。
人々はこれに出会うことを恐れた訳ですが、妖怪たちは辻から辻へと行進します。
これは辻、道の交わる地点に『異界への入り口』が発生するということを暗に示しているように思えます。
『妖かし(あやかし)』と共に生きてきた日本人だからこその、なんとなく肌で感じられる感覚です。
現代だって、朝、交差点で出会い頭にぶつかった男女に恋が芽生えたりしたりしなかったり。
道の交わる地点は『異世界への入り口』なのです。
宝塚歌劇団との違いは?
日本独特の舞台文化として『宝塚歌劇団』があります。
この舞台にも花道に似た通路がありますがその形はかなり異なります。
舞台の前にオーケストラボックス、その前に上手下手をつなぐ客席に張り出した細長い舞台。
これを『銀橋(ぎんきょう)』といいます。
銀橋の上で演技をすることもありますが、宝塚スターたちが歌いながら流れるように銀橋を渡っていく姿はまるで社交ダンスを観るよう。
宝塚でも日本ものの演目の時は『花道』を作ることもあるようですが、銀橋はより観客の近くに行って魅せることに重きをおいているように感じます。
このあたりに、西洋演劇の影響が伺えるのかなと。
先に述べた、役者が客席から登場する演出はこちらに近いと思います。
ゆえに。
花道は日本人だからこそ生み出せた装置であり、歌舞伎が長く愛される影の立役者なのです。
んで、なんでドボン席?
ながーい前置きでごめんなさい。
そんな訳でして、花道では結構大事なお芝居をいたします。
すっぽんがバミリ(目印)の役割をするのか、すっぽんのところで見得をするんですね。
ええ、上手に向かって。
つまりこのドボン席では、せっかくの見どころのシーンで役者のおしりを拝眼することに。
しかもスポットライトにロックオンされているので、眩しい!
逆光!!
そんなお席なんですよ (^_^;)
とはいえ、これだけ間近くお芝居を見られるのは本当に稀なことです。
これだけ近くなければ。
マボロシのトニートニー・チョッパーがルフィを励ますシーンで桜の花びらが少しだけ舞い散るのですが、これもゲット。
チョッパーの蹄形?
インペルダウンのボンテージ美女(?)獄吏のサディちゃん(尾上 右近)。
彼女は水の中での殺陣があったのでゴム製ブーツの裏側にしっかり滑り止めがついているのを確認。
どピンクのお衣装だったのでちっちゃい子の長靴みたいでちょっと萌え。
なんて楽しみ方はできません。
本当にこの幸運に感謝しつつ、また次の公演を楽しみにしたいと思います。
まだまだ歌舞伎の魅力をお伝えし足りないけれど、今回はここまで。
それではまたいつか。