今週のお題「あの人へのラブレター」
年間300日スーツで過ごす女、バリキャリイシイドです。
五月も下旬になりました。
新入生諸君はあと1ヶ月で試用期間終了、正式に会社の一員となる方も多いと思います。
ちょっとしんどいかもしれないけど、がんばれ!
新入生、シミズくん(仮)
さて、イシイドの職場にも新入生がやって来ました。
新卒入社のピッチピチの若人です。
ま、部署は違うんですけどね。
新しい仲間ですから、仲良くしていけるといいな。
さて、この新入生、名をシミズくん(仮)といいます。
見た目は
「銀行の人かな?(偏見)」
というような真面目そうな印象で、中身も礼儀正しい。
朝礼の時には誰よりも大きな声で挨拶をする。
だけどハッキリ言っちゃうと『堅そう』
今までうちに来た新入生としてはかなり異質な雰囲気をまとっておられます。
こういうキャラの子は初めてで、みんながちょっとどよっとしたくらいなんですね。
それはともかく、『歓送迎会』という名の新入生をダシにつかった飲み会に突入するのであります。
歓送迎会が始まる
さて、歓送迎会は最寄りの駅近、チェーンの居酒屋で開催されました。
たぶん10人くらい用の個室に15人。
細長い掘火燵に向かい合って座ります。
狭かったけど、それもまたよし。
私の右手には事務員さん。
左手にシミズくん(仮)。
部署も違うし年も離れてる彼にとっては、気まずい席であったかもしれない。
事務姉さんと女子トークを繰り広げながら、シミズくん(仮)に時々話しかけたりして宴は過ぎていきます。
このシミズくん(仮)。
まぁ、めっちゃ飲む。
しかも日本酒とか水割りとか、強い酒ばかりぱっかぱっか飲むんだな、これが。
事務姉さんに
「これ、薄くないスか?」
「あ~、うっすーい」
とか言ってる私たちも私たちだけども。
顔が丸顔メガネで幼く見えるので、顔は『江戸川コナン』、体は『工藤新一』みたいなちょっとアンバランスさがある。
ちょっと心配になって
「シミズくん(仮)、まさか未成年じゃないよね?」
「21です」
ああ、良かった。
記事にできなくなるとこだったよ。汗
にしたって、お酒は二十歳から。
21歳の飲み方じゃないでしょ (^_^;)
正面に座った上司が
「まあ、飲め(水割り)。だけど、その前にこっち(ウーロン茶)飲めな」
と上手いこと舵を取ってくれていたので、安心してほかっておいた。
宴会終了20分前までは。
その時は、突如訪れた。
酒神さま、降臨!!!
それまで、遠慮がちに(?)バカスカ飲むばかりだったシミズくん(仮)が突然堰を切ったように語りだしたのだ。
彼の21年というそのまだ短い半生と、それよりももっと長いであろう残りの人生について。
い、今まで充分時間あったででしょうがーっ!
しかもよく20分でまとめたなぁ、オイ。
感心するし才能あるんじゃない?
ただ、聞いているのは私だけだけど。
と相づちをうっているうちに、歓送迎会は知らないうちに一本締めでお開きとなっておりました。
「あ、イシイドさん、すんません。ちゃんとコイツ(シミズくん(仮))送っていきますんで」
なかなか話が止まらないシミズくん(仮)を素面の後輩が引き取ってくれた。
車に押し込まれたシミズくん(仮)を「その、親切な先輩の車で絶対に粗相をするなよ」と念を送りつつ見送ったのでした。
無礼講
無礼講ということばがある。
元々、神さまに御酒や食事を捧げ共に興じる神事を礼講といい、礼講ではない人間だけのくだけた祭りを無礼講というのだそう。
無礼講ということばを目下の者が言ってはいけないが『無礼講は何をやっても許される』というものでもない。
目上の者にタメ口も問題だし、セクハラなんてもっての外だ。
そういう意味で、うちの宴会はいい塩梅の無礼講なのだけど、シミズくん(仮)は大きなミスをした。
シミズくん(仮)はあの20分間で5回ほど『資格を取って』ということを繰り返した。
シミズくん(仮)は技術職だ。
技術をみがいて資格を取りたいというのは向上心の表れだと思う。
そして、親には苦労をかけたのでがんばって家を建ててあげたいとも。
これも立派な心がけです。
私にゃない考えですもん。
だけども、こうも言った。
「この仕事(技術職)ってお給料がアレだっていうじゃないですか。
だからできるだけ早く資格を取って、転籍とか、転職とか、したいと思ってるんですよねぇ」
違う、違う。
そうじゃ、そうじゃないんだよシミズくん(仮)!!!
確かにウチの会社の技術職の給料はアレだ。
だから資格を取れば手当ても増える。
だけど、君は技術職だ。
我々営業職が、扱う商品や関連の業界、法規について学び見識を深めるのは当然のことように。
技術職だってその技術を日々みがいていくのは、朝、顔を洗って歯みがきして出てくるのと同じくらい当たり前のことなのだよ、シミズくん(仮)!
資格は技術を磨いた先にあるものだ。
もちろん、無資格無認可なんてあってはならないことだけど、資格を持つこと以上にもっと人に目を向けてくれないか。
どんなに腕のいい技術者でも、大事なお客さまとケンカしてくるような技術者なら仕事は頼みたくない。
人に。
仲間に。
目を向けてくれないか?
向けてるつもり、なのかもしれない。
だけど、それなら。
今、君を歓迎している私たちの前で、次の仕事の話などできないでしょう。
酔いがまわったウッカリなのだろう。
隣の部署のオバねーさんだから言っても構わないと思ったのかもしれない。
だけど無礼講と言えど、やっぱり言ってはいけないことがあるのだよ。
まだ若い君だから。
この話はみんなには黙っておくよ。
繰り返すけれど、ウチの業界の技術者の給料はアレだ。
本当に気の毒になる。
腕が良くて、お客さまからも仲間からも信頼の厚い技術者ほど、家族のために退職してしまう。
そして、みんな言うのだ。
「本当は、この仕事やりたいんですよ」
「もう少し、この店で働きたかったです」
そう言って名残惜しそうに巣立ってゆく。
私たちはそんな背中をいくつもいくつも、感謝の気持ちを込めて見送った。
だからもし君が巣立つ時が来たら、同じように感謝の気持ちを込めて見送りたい。
どうか、そんな仲間になってほしいと思うのです。
酒神さまは突然に
さて、シミズくん(仮)を見送って、ひと安心で列車に乗り込んだイシイドにも。
酒神さまは降臨された。
列車に揺られ、こーりゃちょっとヤバイんじゃないかとなりました。
座席はすでに埋まっていて、床に座るか一瞬迷ったけどなんとかこらえた。
うそ。
実はしゃがんだ。
うわーん、ごめん。
薄いとか言って。
だけど、酒神さまは酒を愛する者に優しいのだ。
乗り換えの駅で踏切事故があった。
私がホーム↔️トイレを二往復しても、予定の電車に乗ることができました。
無礼講。
人との礼を守っても、お酒の神さまにも敬意を忘れちゃいけないね。
そんな夜でございました。