こんばんは!年間300日スーツで過ごす女、乙女イシイドです!
2018年も一週間が過ぎましたが、まだまだ年末のお話をしております。
先日の竹馬の友女子会。
本来ならばお泊まりだったのですが、なにしろ前日が
だったので。
さすがにキャンセルしてひとり帰路につきました。
その途中であったお話です。
タクシー乗り場の睦言
みんなに手を振ったのが23:00過ぎ。
23:30を少し過ぎたころに地元の駅に到着。
タクシー乗り場に向かうと、既に7組ほど並んでいました。
さすが年の瀬。
普段ならタクシーの方が列をなしているのに。
歩いた方が早そうだけど、時間も時間だし…
おまけに後ろにも6組ほど並んでしまったので、逆に今さら退くのが惜しくなってしまったのです。
タクシー乗り場のバカップル
はじめはブログでも書こうかとEvernoteを立ち上げたのだけど、ちょっと気分がのらない。
というか、後ろのカップルがやたらと近い。
まじまじと顔を見るわけにもいかないので学生なのか社会人なのかもわからなかったけど、大きな楽器らしきものを背負った二人組でした。
「今日、どこ泊まるの?」
「◯◯(隣の)市まで出て…」
「ふぅーん。ねぇねぇ、うた歌ってもいい?」
「部屋に着いたらね」
「やったー。わーっておっきい声で歌っても大丈夫だよねー♪」
(……………)
「でもさぁ。◯◯さん、みんなの前で怒るじゃん。あれ、かなしい」
「だってみんなの前だからしょうがないじゃん。いいもの作らないといけないし」
「キライになっちゃうかも」
「なっちゃうの?」
「ならなーい 笑」
……………
どうやら、同じ音楽サークルの仲間で『彼』の方がサークルを引っ張る立場にあるらしい。
っていうか。
この二人すごく近いの。
イシイドは160cmもない小柄さんです。
この日はヒールのないブーツを履いていたので余計に小さくなっていたからでしょうか。
後頭部というか、耳元の辺りできこえるんですよね。
すんごく気持ち悪い。
あえて聞かせてるんだろうか、イシイドに。
『彼』は今年34歳になる。
卒業後、仲間とともに社会人サークルを立ち上げた。
ここ数年では、40名ほどが在籍する界隈では名の知れた楽団に成長したと思う。
隣にいる『彼女』は2年前に加入した。
たまたま『彼』らの演奏会を観に来たことがきっかけだった。
卒業と同時に演奏するステージを失った『彼女』と、最近別の楽団を立ち上げた後輩に母校の卒業生を奪われていた『彼』らと。
どちらにとっても渡りに船だった。
『彼女』は粗いながらも人を引き付ける魅力的な演奏した。
そして、『彼女』の魅力的な容姿にも。
女性メンバーがほとんど結婚してしまった今、独身の野郎どもが色めき立った。
『彼女』はあっという間にサークルの『姫』となった。
きっかけはある大きな演奏会のリハーサルだった。
『姫』に群がる『騎士』たちの間で小さないざこざがあった。
あるものは自分の『才能』を。
あるものは自分の『財力』を。
あるものは自分の『容姿』を。
あるものは自分の『熱意』を。
それぞれに誇示し、そしてその結果ハーモニーが乱れたのだ。
さすがに『彼』も見逃せなくなった。
『彼』は彼らを叱責した。
もちろん『彼女』も例外ではなかった。
『彼』は、これまで『彼』らが積み上げてきたハーモニーを崩すことは許さない。
叱責を受けて『騎士』たちも必死に立て直し、なんとかリハーサルは形を成した。
リハーサルを終え、『彼女』は『彼』に謝罪した。
そして脱退の意思を伝えた。
楽団の結束を壊したのは自分だから。
だが、『彼』はそれを許さなかった。
『彼』が『騎士』たちを恫喝したのは嫉妬にほかならなかったから。
そして『姫』にしてみても、お互いをけん制しあう横並びの『騎士』たちよりも、グループを力強くけん引する『王』の方が魅力的だったのは言うまでもないだろう。
それからは『彼女』が『彼』の悩みとなった。
相変わらず、『姫』は『騎士』たちの中心にいた。
その姿を見ると全身の血が逆流する感覚に陥ったが、誰にも気づかれるわけにはいかなかった。
『彼』には帰る家があるのだ。
『妻』は同じ楽団に所属したことはなかったものの、音楽を通じて知り合った。
しかし結婚と、子供が生まれるのと同時にフルートをやめてしまった。
『彼』が音楽を続けることに理解も協力も惜しまなかったが、『彼』の演奏会に顔を出すことはほとんどなかった。
そして、時々、『彼』に気づかれないようにフルートを吹いている。
それは未練がある証拠なのだろう。
二人の関係は誰にも気づかれてはならない。
だから『彼女』が『騎士』たちに囲まれている姿も我慢する。
人前で『彼女』を厳しく指導することもある。
すべては誰にも気づかれないために。
その代わり、二人だけの時は『彼女』を思い切り甘やかしかわいがるのだ。
『彼女』を置いて帰らなければならない罪滅ぼしに。
そんな二人に絶好のチャンスが訪れる。
年末の演奏会だ。
打ち上げと撤収を理由に泊りがけになると『妻』には伝えた。
これまでにも度々あったことだ。
怪しまれることはない。
一次会、少し人数の減った二次会をやり過ごし「また来年もよろしく」と言いながら駅に向かう。
『彼』の最寄り駅は名鉄だが今日はJRだ。
普段、練習場には車で通っていいるので誰も不思議に思わない。
別の車両に乗り込んだ『姫』も『騎士』たちに囲まれて帰るが、今日は友達のうちに泊めてもらうのだと言って二つ先の駅で降りる。
そしてタクシー乗り場で落ち合った。
知り合いは誰もいない。
って感じですかーい?
ええ、そう。
全てイシイドの妄想。
「さむーい」
「ああ、もう大通りまで出てタクシー拾うか」
「早くあったかいとこに行きたーい」
バカップル戦線離脱。
絶対待ってた方がタクシーは捕まると思う。
街中じゃないんだからウチの田舎をなめんなよ!
たぶん隣の駅まで徒歩で歩いて結局またタクシー乗り場に並ぶことになるのだろう。
やーい。
年の瀬の夜。
タクシー乗り場の物語はまだ続く。